結婚式を控えた新郎新婦の皆さん、こんにちは!
一生に一度の結婚式を彩るプロフィールムービーは、お二人の生い立ちや出会い、これまでの歩みをゲストに伝える大切な演出です。感動的なムービーを自作したいと考える方も多いでしょう。しかし、その作成には「著作権」という重要なルールが関わってきます。特に音楽や映像素材の使用には細心の注意が必要です。
「著作権って難しそう…」「自作ムービーでトラブルになったらどうしよう?」と不安に感じる方もいるかもしれません。ご安心ください。著作権の基本を正しく理解し、適切な方法で素材を選べば、法律を遵守しながら、お二人だけの素敵なオリジナルムービーを安心して制作することができます。
この記事では、結婚式プロフィールムービーを自作する際に知っておくべき著作権の基礎知識から、音楽、写真、映像素材ごとの具体的な注意点、そして著作権をクリアして安全にムービーを作るための実践的な方法まで、プロの視点から徹底的に解説します。この記事を読めば、著作権の心配なく、ゲストの心に残る感動的なプロフィールムービーを完成させられるはずです。
結婚式プロフィールムービーと著作権の基本
まずは、プロフィールムービーとは何か、そしてなぜ結婚式という場で著作権が問題になるのか、その基本を理解しましょう。
プロフィールムービーとは何か
プロフィールムービーとは、新郎新婦それぞれの生い立ちから出会い、そして結婚に至るまでのストーリーを、写真や映像、音楽、ナレーションなどを組み合わせて紹介する映像作品です。結婚披露宴の演出として定番となっており、ゲストに二人の人柄や歴史を深く理解してもらい、感動や共感を呼ぶ大切な役割を担っています。
著作権とは何か?なぜ結婚式で問題になるのか
著作権とは、作品を創作した者がその作品に対して持つ権利のことを指します。音楽、映像、写真、文章、イラストなど、他人が作った作品(著作物)を無断で使用すると、著作権侵害となります。著作権は、作品が創作された時点で自動的に発生する権利であり、特別な登録は不要です。
「結婚式は個人的なイベントだから大丈夫」と誤解されがちですが、披露宴は不特定多数のゲストが集まる「公の場」とみなされます。そのため、市販の楽曲や映像などを無許可で使用することは、著作権法上の「商用利用」に該当し、著作権侵害となるリスクがあるのです。
知っておくべき2つの権利:演奏権と複製権
結婚式で音楽を使用する際に特に重要となるのが、「演奏権」と「複製権」の2つの権利です。
- 演奏権(上演権):楽曲を公衆に「演奏」または「上演」する権利です。結婚式場でBGMとして市販のCDを流したり、余興で生演奏をしたりする場合に発生します。多くの結婚式場は、JASRAC(日本音楽著作権協会)やNexTone(ネクストーン)といった著作権管理団体と包括契約を結んでいるため、この演奏権については式場側で対応してくれることがほとんどです。新郎新婦が個別に手続きを行う必要は基本的にありません。
- 複製権:楽曲を「複製(コピー)」する権利です。市販のCDから音楽データをパソコンに取り込んだり、その音楽をプロフィールムービーのBGMとして映像に組み込んだりする行為がこれに該当します。自作のプロフィールムービーに市販の楽曲を使用する場合、この複製権の許諾が必須となります。
著作隣接権とは?
音楽には、著作権とは別に「著作隣接権」という権利も存在します。これは、作詞・作曲家が持つ著作権とは異なり、歌手や演奏家(実演家)、レコード会社(レコード製作者)などが持つ権利です。市販のCD音源をプロフィールムービーに使用する場合、楽曲の著作権だけでなく、この著作隣接権の許諾も必要になります。
【最重要】プロフィールムービーの音楽著作権をクリアする方法
プロフィールムービーの著作権問題で最もトラブルになりやすいのが「音楽」です。ここでは、音楽の著作権をクリアするための具体的な方法を解説します。
市販楽曲を使用する場合:ISUMを通じた正規申請
お気に入りの市販楽曲をプロフィールムービーに使用したい場合、最も一般的で安全な方法は、ISUM(一般社団法人音楽特定利用促進機構)を通じて正規に申請することです。
ISUMとは?役割と仕組み
ISUMは、ブライダルシーンでの音楽利用における著作権と著作隣接権の処理を一括して代行する一般社団法人です。ISUMに登録されている楽曲であれば、個別に権利者へ連絡することなく、定められた使用料を支払うことで適法に利用できます。
ISUM申請の流れ(個人ではできない、式場・業者経由)
残念ながら、ISUMへの申請は個人ではできません。ISUMに加盟している結婚式場や映像制作会社などのブライダル事業者を通じて手続きを行う必要があります。
新郎新婦は、使用したい楽曲をリストアップし、式場のプランナーや映像制作業者に相談しましょう。業者がISUMに申請代行を行い、必要な許諾を得てくれます。
ISUM登録楽曲の探し方
ISUMの公式サイトには「ISUM楽曲データベース」があり、結婚式で適法利用できる楽曲を検索できます。使用したい曲が登録されているか、事前に確認しておくと良いでしょう。
申請費用と期間の目安
ISUMを通じた申請費用は、1曲あたり3,000円から6,000円程度が一般的です。使用する曲数や時間、使用形態によって変動します。 申請から許諾が下りるまでに時間がかかる場合もあるため、ムービー制作は余裕を持って進めることが大切です。
結婚式で使いたい曲が決まったら、まずは式場のプランナーさんに相談しましょう。式場がISUMに加盟しているか、著作権処理を代行してくれるかを確認することが、トラブル回避の第一歩です。

著作権フリー・ロイヤリティフリー音楽を活用する
市販楽曲にこだわらないのであれば、著作権フリーやロイヤリティフリーの音楽を活用するのが最も手軽で安全な方法です。
メリット・デメリット
- メリット:著作権侵害のリスクがなく、費用を抑えられることが多いです。個人でも自由に利用できます。
- デメリット:有名アーティストの楽曲は使えません。楽曲の選択肢が限られる場合があります。
おすすめの著作権フリー音楽サイト
インターネット上には、結婚式ムービーにも使える高品質な著作権フリー音楽を提供するサイトが多数存在します。利用規約をよく確認した上で活用しましょう。
- YouTube Audio Library:YouTubeが提供するオーディオライブラリで、数千曲以上の著作権フリーな楽曲がダウンロードできます。様々なジャンルやムードの楽曲が揃っており、利用条件も明確に示されています。
- DOVA-SYNDROME:豊富なジャンルのBGMや効果音を無料で提供しているサイトです。結婚式向けの楽曲も多数見つかります。
- Bensound:フランスの作曲家ベンジャミン・タッシーが提供するサイトで、商用利用も可能な著作権フリーの楽曲をダウンロードできます。ジャンルやムードで楽曲を選ぶことができます。
- Incompetech:ケビン・マクロードによって運営されているサイトで、多種多様な楽曲が著作権フリーで提供されています。商用利用も可能な楽曲もありますが、利用前に利用条件を確認してください。
- Free Music Archive:クリエイティブ・コモンズやパブリックドメインの楽曲を提供しています。ジャンル別に楽曲を探すことができます。
- d-elf:結婚式向けに特化した著作権フリーのBGM素材を無料で提供しています。
著作権フリーの音楽でも、サイトや楽曲によって利用規約が異なります。「商用利用可否」「クレジット表記の有無」「加工の可否」などを必ず確認し、ルールを守って使用しましょう。
無音ムービーとCD原盤同時再生
ムービーに音楽を組み込まず、無音のムービーを作成し、結婚式当日に会場で市販のCD原盤をBGMとして同時に流すという方法もあります。この方法であれば、複製権の問題は発生しません。
メリット・デメリット
- メリット:著作権・著作隣接権の申請が不要になります。
- デメリット:映像と音楽のタイミングを完璧に合わせるのが非常に難しいです。会場の音響担当者との綿密な打ち合わせと、事前の十分なテストが不可欠となります。
オリジナル楽曲を制作する
もし音楽制作のスキルがあるなら、自分たちでオリジナル楽曲を制作するのも一つの手です。この場合、自分たちが著作権者となるため、著作権の問題を一切気にすることなくムービーに組み込むことができます。
写真・映像素材の著作権と肖像権
音楽だけでなく、プロフィールムービーに使用する写真や映像素材にも著作権や肖像権が関わってきます。
自分で撮影した写真・映像
自分で撮影した写真や映像は、原則としてあなたが著作権を持つため、自由にプロフィールムービーに使用できます。
他人が撮影した写真・映像
友人やプロのカメラマンが撮影した写真や映像を使用する場合は、必ずその撮影者(著作権者)から使用許可を得る必要があります。特にプロのカメラマンに撮影してもらった写真の場合、使用範囲が契約で定められていることが多いため、事前に確認しましょう。
インターネット上の画像・動画・キャラクター
インターネット上で見つけた画像、動画、映画やアニメのワンシーン、有名キャラクターなどを無断で使用することは、著作権侵害にあたります。たとえ個人的な利用目的であっても、公の場で上映する結婚式ムービーでの使用は厳禁です。 著作権侵害は法的な罰則の対象となるだけでなく、式場での上映を拒否される可能性もあります。
著作権フリー・商用利用可能な素材サイトの活用
写真や映像素材も、著作権フリーや商用利用可能な素材サイトを活用することで、安心してムービーに組み込むことができます。利用規約をよく確認し、クレジット表記が必要な場合は忘れずに行いましょう。
おすすめの著作権フリー・商用利用可能素材サイト例:
- NHKクリエイティブ・ライブラリー:NHKが提供する、風景や動物などの映像、音楽、効果音の素材サイトです。
- Lab01(らぼわん):結婚式用の動画素材を無料で配布しており、プロフィールムービーに適したアニメーションやエフェクトが豊富です。
- ムビサポ:結婚式自作ムービー応援サイトで、カウントダウン動画やメッセージ動画、エフェクト動画などを無料で配布しています。
- ニコニ・コモンズ:ニコニコ動画のユーザーが動画素材を登録しているサイトで、アニメテイストの素材や効果音が豊富です。
- Pixabay / Pexels / Unsplash:高品質な写真や動画素材を無料で提供している海外サイトです。

肖像権・プライバシー権への配慮
ムービーにゲストの顔が映る写真や映像を使用する場合、著作権とは別に「肖像権」や「プライバシー権」への配慮も必要です。特に、特定個人が識別できる形で映っている場合は、本人の許可を得てから使用するようにしましょう。
結婚式ムービーをSNSに投稿する際は、写っているゲストの顔や、使用しているBGMの著作権に注意が必要です。SNSのプラットフォームによっては、著作権管理団体と契約している場合もありますが、念のため確認し、トラブルを避けるためにも配慮しましょう。
著作権を侵害しないプロフィールムービー自作のステップ
著作権をクリアしたプロフィールムービーを自作するための具体的な手順をご紹介します。
企画・構成段階での注意点
まずは、ムービーの企画・構成を練る段階で、使用したい素材の洗い出しと権利確認を同時に行いましょう。
- ストーリーとコンセプトの決定:どのようなメッセージを伝えたいか、どんな雰囲気のムービーにしたいかを明確にします。
- 使用写真・映像の選定:新郎新婦それぞれの生い立ち、二人の出会い、思い出の場所など、ストーリーに沿った写真や映像を選びます。この時点で、他人が撮影したものやインターネット上の素材が含まれていないかを確認し、必要であれば許可取りや代替素材の検討を行います。
- BGMの選定:ムービーの雰囲気に合う楽曲を選びます。市販曲を使用する場合はISUM登録曲の中から選び、式場や業者に申請代行を依頼する準備をします。著作権フリーの楽曲を使用する場合は、利用規約を確認しながら選定します。

編集・制作段階での注意点
企画・構成が決まったら、いよいよムービーの編集作業に入ります。
- 音楽の挿入方法:
- 市販曲の場合:ISUMを通じて許諾を得た上で、映像編集ソフトでBGMとして組み込みます。
- 著作権フリー曲の場合:各サイトの利用規約に従い、必要であればクレジット表記を行いながら組み込みます。
- 写真・映像の選定と加工:
- 自分で撮影したもの、または許可を得たもの、著作権フリー素材のみを使用します。
- 写真の解像度が低いと、大画面で上映した際にぼやけてしまうことがあります。最低でも左右1280ピクセル以上の高解像度の写真を使用しましょう。
- 写真や映像の縦横比(アスペクト比)が崩れないように注意して編集します。
- テキストやナレーション:
- 文章も著作物です。他人の文章をそのまま使用するのではなく、自分の言葉で表現しましょう。
- ゲストが読みやすい文字サイズやフォントを選ぶことも大切です。

最終チェックと式場への確認
ムービーが完成したら、結婚式での上映に向けて最終的な確認を行います。
- 著作権問題の最終確認:使用した全ての音楽、写真、映像、テキストが著作権をクリアしているか、または適切な許可を得ているかを再確認しましょう。特に音楽については、ISUMの許諾シールや証明書が発行されているかを確認します。
- 式場への持ち込み規定の確認:式場によっては、持ち込みムービーのファイル形式、解像度、アスペクト比、上映時間などに細かな規定があります。事前に必ず確認し、それに合わせてムービーを調整しましょう。
- 上映テスト:可能であれば、結婚式で使用する機材で事前に上映テストを行い、映像や音声に問題がないか、タイミングは合っているかなどを確認します。
著作権侵害の具体的な事例とリスク
著作権侵害は、単なるルール違反ではなく、法的な問題に発展する可能性があります。過去の事例や、個人が負うリスクについて理解しておきましょう。
過去の訴訟事例(映像制作会社 vs JASRAC)
実際に、結婚披露宴で使用する演出映像に市販の音楽を無許可で使用していた映像制作会社が、JASRACに提訴された事例があります。この事例では、映像制作会社がJASRACに一定の金銭を支払い和解に至っています。 このような事例は、結婚式における著作権問題の深刻さを示しており、業界全体に大きな影響を与えました。
個人が負う可能性のある罰則
著作権侵害は、民事上の損害賠償請求だけでなく、刑事罰の対象にもなり得ます。個人の場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。 「知らなかった」では済まされないため、正しい知識を持つことが重要です。
式場での上映拒否
著作権処理が適切に行われていないムービーは、結婚式場側で上映を拒否されるケースが少なくありません。 せっかく心を込めて作ったムービーが当日流せない、という最悪の事態を避けるためにも、必ず著作権をクリアした状態で準備を進めましょう。
まとめ
結婚式で上映するプロフィールムービーは、新郎新婦の生い立ちや二人の歩みをゲストに伝える大切な演出です。自作する際には、著作権についての理解が不可欠であり、特に音楽や映像素材の使用には細心の注意が必要です。
市販楽曲を使用する場合はISUMを通じた正規申請を、著作権フリー素材を活用する場合は利用規約をしっかり確認することが重要です。写真や映像も、自分で撮影したもの、または明確に許可を得たもの、著作権フリーの素材を活用しましょう。インターネット上の無断転載や、映画・アニメのワンシーンの使用は厳禁です。
著作権をクリアしたムービーを制作するためには、企画段階から素材の権利確認を行い、編集時には適切な解像度やアスペクト比に注意し、最終的には式場への持ち込み規定を確認し、上映テストを行うことが成功の鍵となります。
著作権トラブルを回避し、お二人らしい感動的なプロフィールムービーを安心して完成させ、最高の結婚式を迎えましょう。
Q&A
Q1: 自分で撮影した写真は著作権フリーなのか?
A1: はい、自分で撮影した写真は、あなたが著作権を持つため、自由にプロフィールムービーに使用することができます。ただし、写真に他人が写っている場合は、肖像権への配慮が必要です。
Q2: 友人が撮影した写真を使用しても良いのか?
A2: 友人が撮影した写真を使用する場合は、その友人(著作権者)から使用許可を得ることが必要です。口頭だけでなく、できれば書面やメッセージなどで許可を得た記録を残しておくと安心です。
Q3: 著作権フリーの音楽はどこで見つけることができるのか?
A3: 著作権フリーの音楽は、YouTube Audio Library、DOVA-SYNDROME、Bensound、Incompetech、Free Music Archive、d-elfなどのインターネット上の著作権フリー音楽提供サイトで見つけることができます。利用規約をよく確認して使用しましょう。
Q4: ISUMに登録されていない曲を使いたい場合は?
A4: ISUMに登録されていない楽曲をプロフィールムービーに使用したい場合、個人で直接、作詞・作曲家(著作権者)とレコード会社(著作隣接権者)の両方から個別に許諾を得る必要があります。これは非常に手間がかかり、現実的には困難な場合が多いため、ISUM登録曲の中から選ぶか、著作権フリーの楽曲を検討することをおすすめします。
Q5: 著作権フリー素材でも注意することは?
A5: 著作権フリーやロイヤリティフリーとされている素材でも、サイトや素材ごとに利用規約が定められています。例えば、「商用利用は可能か」「クレジット表記は