結婚式で上映するプロフィールムービーやオープニングムービー。お気に入りの曲で彩りたいと願う新郎新婦は多いですが、そこには「著作権」という大切なルールが存在します。「好きな曲をBGMに使ったら、式場からNGと言われた…」そんなトラブルを避けるためにも、正しい知識を身につけておくことが不可欠です。
この記事では、結婚式ムービーの音楽に関する著作権の基本から、市販曲を合法的に使用するための「ISUM」の仕組み、そして費用を抑えたい場合に役立つ「フリー音源」の賢い活用法まで、誰にでも分かるように順を追って解説していきます。
この記事を読めば、著作権の基本から具体的な手続き方法、おすすめの音源サイト、さらにはムービーを最高の形で彩る音楽選びのコツまで、結婚式ムービーの音楽に関する全ての悩みが解決するでしょう。
結婚式ムービーの音楽に「著作権」が重要な理由
まず、なぜ結婚式ムービーにおいて音楽の著作権が重要なのか、その基本をしっかりと押さえておきましょう。この知識が、トラブルを未然に防ぐ第一歩となります。
音楽に存在する2つの大切な権利:著作権と著作隣接権
私たちが普段聴いている音楽には、大きく分けて2つの権利が関わっています。これらは、音楽を創作し、世に広める人々を守るための大切な権利です。
- 著作権:作詞家・作曲家など「曲を作った人(著作者)」の権利。楽曲の複製、演奏、公衆送信などを許諾する権利です。
- 著作隣接権:歌手・演奏家・レコード会社など「曲を広める人(実演家・レコード製作者)」の権利。市販のCD音源などには、この権利も含まれます。
結婚式で市販のコンパクトディスク音源などをムービーに使用するということは、これらの権利を利用することになるため、作者やアーティストに許可を取り、決められた使用料を支払う必要があるのです。
結婚式でBGMとしてCDを流す場合は「演奏権」、ムービーに音楽を組み込む場合は「複製権」という権利が主に発生します。特にムービー制作では「複製権」の処理が必須となり、これは式場がJASRACと包括契約を結んでいても別途手続きが必要です。
無断使用は重大なトラブルに発展する可能性
もし、これらの権利者に無断で楽曲を使用してしまうと、著作権侵害となり、法的なトラブルに発展する可能性があります。 実際に、2017年には結婚式で使用する映像に無断で市販の音楽を使用した映像制作会社が、JASRAC(日本音楽著作権協会)から訴訟された事例も存在します。 そのため、多くの結婚式場では、著作権の手続きがクリアされた楽曲でないと上映できないルールになっています。
【市販曲を使いたい】ISUM(アイサム)で正規に利用する
「でも、大好きなあのアーティストの曲を使いたい!」という方がほとんどだと思います。そのための正規ルートが「ISUM(アイサム)」を通した申請です。
ISUMとは?結婚式の音楽手続きの救世主
ISUM(一般社団法人音楽特定利用促進機構)とは、結婚式で利用される音楽の著作権手続きを、新郎新婦や結婚式場に代わって一括で行ってくれる組織です。 以前は非常に複雑だった申請手続きが、ISUMの登場によって簡単・明確になりました。
ISUMで利用できる楽曲と申請の流れ
ISUMの申請は、以下の流れで行います。個人で直接ISUMに申請することはできないのがポイントです。
- 使いたい曲を決める:まず、ムービーで使いたい曲の候補をいくつか挙げます。
- ISUMのサイトで検索:使いたい曲がISUMに登録されているか、公式サイトの楽曲データベースで確認します。 登録されている場合、その曲が収録されているCDアルバムや、配信音源(【配信音源】と記載)が指定されていることがあります。指定された音源以外は使用できないため注意が必要です。
- 式場・業者に依頼:ムービー制作を依頼する結婚式場や専門業者がISUMの登録事業者であることを確認し、楽曲の利用申請を依頼します。 自作ムービーの場合でも、式場や申請代行業者に相談することでISUM申請を代行してもらえる場合があります。
- 手続き完了!:あとは業者が手続きを代行してくれます。所定の利用料を支払えば、正規の許諾シールが発行され、結婚式で楽曲を上映できます。
ISUMの楽曲データベースはこちらから検索できます。
ISUM(アイサム)公式サイト
ISUM利用の費用と注意点
ISUMを利用する際には、いくつかの注意点があります。
- 全ての曲が登録されているわけではない:洋楽やインディーズ、またはアーティストの方針によっては、ISUMに登録されていない楽曲も多くあります。
- 利用料がかかる:楽曲の利用には、1曲あたり3,000円~5,500円程度の利用料が必要です。
- 未登録曲のリクエスト:使いたい曲がISUMに登録されていない場合、ISUMに楽曲リクエストを送ることは可能です。しかし、権利者への確認に最短で1ヶ月以上かかる場合があり、必ずしも許諾が得られるとは限りません。
ISUMに登録されていない曲をどうしても使いたい場合、個人でJASRACや日本レコード協会に直接申請する方法もありますが、手続きが非常に複雑で、1曲あたり数万円から数十万円と高額になるケースも少なくありません。 現実的には、ISUM登録曲から選ぶか、フリー音源を検討するのが賢明です。
【費用を抑えたい・ISUMに無い曲】フリー音源を賢く活用
「使いたい曲がISUMに無かった」「なるべく費用を抑えたい」そんな方におすすめなのが「フリー音源」の活用です。ただし、その利用には正しい知識が不可欠です。
「著作権フリー」と「ロイヤリティフリー」の決定的な違い
フリー音源には、大きく分けて2つの種類があります。意味を混同しやすいため、違いを理解しておきましょう。
種類 | 意味 | 特徴 | 費用 |
---|---|---|---|
著作権フリー | 著作権が放棄・消滅している音源 | 完全に無料で自由に使える。クラシック曲の演奏音源などに多い。 | 無料 |
ロイヤリティフリー | 最初に一度購入料金を支払えば、その後は追加料金なしで利用できる音源 | 有料だが、ISUMより安価な場合が多く、一度購入すれば様々な用途で利用可能。 | 有料(買い切りまたは月額制) |
フリー音源のメリット・デメリット
【メリット】
- ISUMに比べて費用を大幅に抑えられる(無料の場合も)
- ISUMのような申請手続きが不要で手軽
- プロが作ったクオリティの高い音源も多数ある
- オリジナリティのあるムービーが作れる
【デメリット】
- 有名なアーティストの曲は使えない
- 膨大な数の音源からイメージに合うものを探す手間がかかる
- 利用規約の確認が必須
【最重要】利用前に必ず「利用規約」を確認!
フリー音源を使う上で最も重要なのが「利用規約」の確認です。 「無料」と書かれていても、実際には以下のような条件が定められていることがほとんどです。
- クレジット表記が必要:ムービーの最後に作曲者名やサイト名を記載する必要がある。
- 非商用利用のみ:個人利用はOKだが、営利目的での使用はNG。
- 加工の禁止:曲を編集・改変してはいけない。
- 利用範囲の制限:結婚式での利用はOKだが、YouTubeなどへの公開はNGなど。
利用規約を読まずに使用すると、思わぬトラブルの原因になります。必ず一つ一つ確認しましょう。
プロフィールムービーで使える!おすすめフリー音源サイト
ここでは、安心して利用できる人気のフリー音源サイトを「無料」と「有料(ロイヤリティフリー)」に分けてご紹介します。実際に多くの映像クリエイターや新郎新婦が利用しており、クオリティも高いと評判のサイトばかりです。
【完全無料】で使えるおすすめサイト
- YouTube Audio Library
解説: YouTubeが公式に提供するライブラリ。完全無料で利用でき、クオリティも高くジャンルも豊富です。まず最初にチェックしたいサイトの一つでしょう。 - DOVA-SYNDROME
解説: 日本のクリエイターが多数参加する有名サイト。ボーカル曲も豊富で、クオリティが非常に高いのが特徴です。感動系から明るい曲まで幅広く揃っています。 - Bensound
解説: おしゃれでポジティブな雰囲気の曲が多い海外サイト。Webサイトや動画でよく使われており、聴き馴染みのある曲が見つかるかもしれません。洗練された印象のムービーにぴったりです。 - 魔王魂
解説: かっこいいロック系や感動的なオーケストラなど、メリハリのある楽曲が豊富。ゲーム音楽のような壮大な曲を探している方におすすめです。 - OtoLogic
解説: シンプルで使いやすいサイト。ポップ、ヒーリング、エレクトロニカなど、幅広いジャンルのBGMが揃っており、クレジット表記のみで利用可能です。
【高品質】な有料(ロイヤリティフリー)サイト
- Epidemic Sound
解説: 世界中の映像クリエイターが利用する最大手サイトの一つ。楽曲のクオリティは非常に高く、どんなジャンルでも見つかります。月額制で使い放題なので、複数のムービー制作や、今後も動画制作を考えている方には特におすすめです。 - Artlist
解説: Epidemic Soundと並ぶ人気のサイト。洗練されたおしゃれな楽曲が多く、ボーカル曲のクオリティも高いのが特徴です。特に洋楽テイストのムービーに合う曲が豊富に揃っています。 - AudioJungle
解説: 1曲単位で楽曲を購入できるマーケットプレイス。必要な曲だけ購入したい方におすすめです。価格は数百円からと手頃で、手軽にプロ品質の音源を手に入れられます。 - PremiumBeat
解説: 写真素材で有名なShutterstock社が運営。プロ品質の楽曲が揃っており、映画のようなクオリティを求める方に最適です。壮大でドラマチックな演出をしたい場合に検討してみましょう。 - Audiostock
解説: 日本最大級の音源サイト。日本のクリエイターによる楽曲が中心で、日本人好みのメロディや展開の曲が見つかりやすいのが魅力です。検索機能も充実しており、イメージに合う曲を探しやすいでしょう。
最高のプロフィールムービーを作るための音楽選びのコツ
著作権のルールを理解した上で、いよいよ具体的な音楽選びです。ムービーをより感動的で記憶に残るものにするために、以下のポイントも意識して選曲しましょう。
ムービーのテーマや雰囲気に合わせる
プロフィールムービーは、お二人の生い立ちや出会い、そして未来への希望を表現するものです。感動的なシーンにはしっとりとしたバラード、楽しい思い出にはアップテンポな曲など、ムービーの各パートのテーマや雰囲気に合った曲を選ぶことで、映像と音楽が一体となり、より深い感動を呼び起こします。
歌詞の内容とメッセージ性
歌詞のある曲を選ぶ場合は、その歌詞がお二人のストーリーや伝えたいメッセージと合致しているかを確認しましょう。ゲストへの感謝、パートナーへの愛情、未来への誓いなど、歌詞が持つ意味がムービーの内容とリンクすることで、より心に響く演出が可能です。
歌詞が直接的すぎる、またはネガティブな内容を含む曲は避けるのが無難です。結婚式というお祝いの場にふさわしい、前向きで温かいメッセージの曲を選びましょう。
曲の長さと構成(パートごとの選曲)
プロフィールムービーは通常5〜7分程度の長さが一般的です。曲の長さがムービー全体に合っているか、または複数曲を組み合わせる場合は、曲の切り替わりが自然かどうかも重要です。幼少期、学生時代、出会いから現在、未来といった各パートに合わせた曲を選ぶことで、ムービーにメリハリが生まれます。
結婚式ムービーの曲選びに関するさらに詳しい情報は、以下の記事も参考にしてください。
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ゲストへの配慮
お二人の思い出の曲を選ぶことは大切ですが、ゲスト全員が楽しめるような選曲も意識しましょう。幅広い年代のゲストに馴染みのある曲や、明るくポジティブな雰囲気の曲を取り入れることで、会場全体の一体感が高まります。
よくある質問(Q&A)
- Q1: 個人的に購入したデータやダウンロードした曲を、そのままムービーに使ってDVDにするのはOK?
- A1: いいえ、それは「私的複製の範囲」を超えてしまうため、著作権法上NGです。BGMとして利用するには、必ずISUMなどの正規の手続きが必要になります。
- Q2: ISUMで申請すれば、どんな曲でも使えますか?
- A2: いいえ、ISUMに登録されている楽曲のみ利用可能です。特に最近の洋楽や、アーティストの方針によっては登録されていない曲も多くあります。必ず事前にISUMの公式サイトで確認することが重要です。
- Q3: フリー音源サイトの曲なら、本当に何をしても自由ですか?
- A3: いいえ、自由ではありません。各サイト・各楽曲に「クレジット表記必須」「非商用のみ」などの利用規約が必ず定められています。利用規約を読むことが、フリー音源を利用する上での最低限のマナーであり、自分たちをトラブルから守る方法でもあります。
- Q4: 自作ムービーの場合、ISUM申請はどうすればいいですか?
- A4: 個人でISUMに直接申請することはできません。自作ムービーの場合でも、ISUM登録事業者である結婚式場や、ISUM申請代行サービスを提供している映像制作業者などを通じて申請を行う必要があります。事前に式場や業者に相談してみましょう。
まとめ:ルールを守って、最高の音楽で結婚式を彩ろう
今回は、結婚式ムービーの音楽著作権について、ISUMでの申請方法とフリー音源の活用法、そして音楽選びのコツを解説しました。
【音楽選びと著作権処理の基本ステップ】
- 使いたい市販曲があれば、まずISUMの楽曲データベースで検索する。
- ISUMに登録があれば、式場やムービー制作業者に依頼して申請する。(個人では直接申請できません!)
- ISUMに無い場合や費用を抑えたい場合は、フリー音源サイトで探す。
- フリー音源を使う際は、必ず「利用規約」を隅々まで読み、ルールを守る。
著作権は、アーティストやクリエイターを守るための大切なルールです。正しい知識を持って手続きを行えば、何も怖いことはありません。お二人の大切な日を、最高の音楽で彩ってくださいね。